恋の華が舞う季節
そしていつものように葵が私を見つけると、笑顔で走ってこっちに来た。


「結衣ちゃん!」


「これ……美穂(ミホ)から、葵が好きだって」


そう言って、踵を返す。


「じゃあ、それだけ」


怒り気味な言葉を残し、私は家へと帰ろうとした。


「待って!」


――え?


「あのさ……前から思ってたんだけど、何か……怒ってる?」


「…………」


「え?! やっぱり……怒ってる?!」


「半分あたってるかも」


「やっぱり……」


俯く葵。


この性格は、天然なのだろうか?


何ていうか……単純?


「私……葵のそういう性格が、ズルいと思う。
 まぁ、私の僻みよ。

 気にしなくていいから」


「――え?」

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