恋の華が舞う季節
そう、結局は、全部……僻み。


葵は完璧だから――


比べてしまう自分がいて、そして何一つ劣っていない葵を見ると、心の中が、黒く染まっていく気がする。


それに対して、純粋で単純で、人一倍気が利く葵を見ていると、自分がどれだけ嫌な奴かが、分かってしまう。


何でだろう……


凄く……


凄く……



自分が最低に見える。



「有り難う」


――え?


葵は、溢れるばかりの笑顔を私に見せる。


一瞬、夕焼けと葵の顔が同調していたかのように見えた。



「僕に向かって、本音で言ってきてくれたのは、結衣ちゃんだけだから。

 いつも……“真面目な自分”を演じていたから、みんな上辺だけで、本当に見ようともせず、それだけだったから……。
 
 だから、今、凄く嬉しいんだ」


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