恋の華が舞う季節
夜には夜の優しさがあるんだね。



「ただいま」


私はさっき勢いよく開いた玄関の扉を、今度はゆっくりと開く。


「お帰り結衣」


「お母さん……。急に出かけて、ごめんなさい!!」


「探していたものが、見つかったの?」


「――え?」


「お母さんは、結衣は葵君を失ってから、辛い姿をいつも見てきたわ。
 でも……今は、やっとその辛さから、出口を見つけ出したって感じがするから……」



お母さん――


「私……。葵が死んでから、毎日が苦しくて、苦しくてしょうがなかった……。
 後悔しても、後悔しても辛くて、泣きたくて」



「うん、分かるわ。
 だからこそ――お母さんは、結衣に希望を与えてくれた子に、感謝してるわ。
 ……でも、ちゃんと時間は守りなさい」



「うん!」



有り難う、お母さん。


お母さんは、私の事を何でも分かるし、知っている。


辛い時も、温かい愛情をくれた事にも知ってるよ。



「お休みなさい!」

「お休み」


私は踵を返し、そのまま自分の部屋へと向かった。
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