恋の華が舞う季節
秦は汗を流しながらも、どこかへ向かっていた。


もしかして――


段々と見えてくる景色。



「着いた。降りろよ」


「ん」



ここは――



「秦、ここって……」


「ああ、ここは――この町が全て見渡せる、この町に住む人しか知らない場所だ」


「知ってたの?」


「ここが――俺の一番好きな場所だから」



私も、ここに小学生の時、何かあったら来ていた。


でもあの日から、何もかもが嫌になって、近付くのさえ嫌悪して、逃げてた。


「俺――何かあったら、必ずここに来てたんだ。
 ここは凄く、自分が知れるんだ。

 辛い時はもちろんだけど、この町の全てが見えるから元気付けられる」


「私も――この町が好きだから、ここにはよく来てた……」
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