トビラの向こう側
「お客さん来ないしちょっとひと休みしよう」と高遠さんから声をかけられた。
「はい」
しばらくたって奥からトレイにカップを二つのせて来た。
二つのカップから紅茶の香りがした。
「どうぞ」
「ありがとうございます」
「……」
今まで挨拶ぐらいしかしなくて
こんな状況になって
なんか…緊張する
高遠さんもさっきから何にも言って来ないし……。
視線を上にあげた。
彼と視線があうドキッとした。
「汐里さんって彼氏とかいるの?」
突然の質問にとまどう。
「あっあの私、今はそん……」
「ま、無理かその容姿じゃ」
何?今、なんて言ったの?
さっきまで人あたりのいい、やさしい笑みを浮かべていたのに。