トビラの向こう側
「汐里さん」
裏口を出た所で後ろから声をかけられた。
振り向く前に誰かは…わかっていたけど…。
こわごわ振り向くと…やっぱり彼がすぐ後ろにいた。
多分、今日の事だよね。
あの時も声をかけたけどもう一回謝った方がいいよね。
「今日はすみませんでした。高遠さんが作ったお料理をムダにしてしまって」
「汐里さん、接客業には向いてないんじゃねぇ」
私はうつむいて唇を噛みしめた。
何を言われてもいい返す事なんてできない。
悪いのは私なんだし。
「どうせ、ぼんやりしていたんだろう?」
その通りなんだけど。
うつむいていた私の頬に手が触れた。
頬から滑るように動いた指が私の顎に触れた…そのまま上を向かされた。