トビラの向こう側
今、私はアパートの自分の部屋にいる。
つい、さっき高遠さんにここまで送ってもらったばかりだ。
昨夜からさっきまでの高遠さんとのやりとりを思い出して…
夢だったんじゃないかって…
ちょっと考えたりもしたけど…
これは現実で…さっきまで高遠さんと一緒にいたんだ。
もう少し一緒にいたくて…
別れ際の彼の言葉を思い出した。
『そんなに寂しそうな顔するな』
『明日も朝から一緒なんだから』
『そうですよね』
『あさっては定休日だし、どこか遊びに行くか?』
『えっ、本当にどこか連れてってくれるの?』
記憶がなくなる前の私はどうだったのか分からないけれど。
汐里としての私は恋愛経験はない、だから…この先どうなっていくのか…恐い高遠さんに溺れてしまいそうで―…。