トビラの向こう側
腰の辺りに重さを感じて目を覚ました。
彼の腕が体の上にのっていた。
彼の息が耳の辺りにあたって、くすぐったい…。
体を、ずらそうとしたら腕に力が入って動けなかった。
私の事、嫌いになったんでしょ?
なのに…何で抱きしめているの?
さっきは冷たい態度だったのに何で…?
さっきの事を思い出したら、また悲しくなって涙で目が潤んできて…
高遠さんに泣いてるなんて知られたくない。
声がもれそうになり口を抑えて、こらえた。
「汐里、泣いてるの?」
私は首を横に振った。
「はぁー…汐里こっち向け」
もう一度首を横に振って振り向かせようとした腕を拒否した。
腰に廻していた手にぐっと力が入りあっと思ったら高遠さんの方に向かされていた。