気になるあいつに聞いてほしい!
男子・・・だって、恋してる!
「化粧なんてするな。まつ毛なんてそれ以上いらん。
 二重になんかするな。そのままで十分だろうが。
 お前の黒髪、染めたりしたら許さねぇぞ!」

こんな風に怒鳴るんだ。



そう思うと急に、何も言えなくなった。
 







 私が初めて撮ったプリクラを見て、「病気か?顔、真っ白だぞ。」と笑った、柔道部のアイツ。スカートとキュロットの違いも分からない。何度説明しても、「要するに丈が短いんだろ。細くもねーのに、そんなの穿くなって。」
 友達とちょっとした下ネタを言い合ってはきゃっきゃ、きゃっきゃ騒いでいるアイツ。もう高校生なのに。やんなっちゃうよ。








 それもそのはず。ここは広島にある辺鄙な島で、海と緑に四方を囲まれている。だから皆、無理して大人びる必要はない。
 私の父は島で唯一の建築専門家で、事務所を立ち上げている。社員は一人だから、すなわち社長。母はアフリカの気候に合った家を建てるプロジェクトのために、東京に単身赴任している。それに弟が1人いて、とても可愛い顔をしている。弦志、と書いて「げんし」だ。
 近所は大体漁師か果物農家だから、うちはかなり都会的なほうなんだ。


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