気になるあいつに聞いてほしい!


 薄いピンク色の桜はすっかり姿を消して、みずみずしい新緑の季節になった。
 そしてそれは、体育祭の季節でもある。




 「去年の体育祭、優勝は一年生らしいぜ。俺らも頑張れば、いけるかもよ。」


 岡木君が興奮した口調でしゃべっている。彼はいつの間にか、すっかりクラスの中心的な存在になっていた。


 「中間テスト、あるしなぁ。」
 
 「ばかか、お前。内申点なんか大学入試に関係ないんだぞ。」


 「でも・・・今からこつこつやっとけって、担任言ってたよ。」


 「体育祭と関係ないだろうが!で、その担任も、体育祭で走るんだよ。いいから、気分転換だと思って、黙っとけっ!」


  高校に入ると趣味も性格も目的も、それぞれ違ってきて、集団でまとまることは難しい。


  それでも岡木君は、楽しそうにそのボス役をやってのける。



  元来固くて内気な私には、ちょっとまねできない。





 「夏生!お前もそう思うだろ?勉強ばっかじゃ、疲れるだろ?!」


 
  どきん。




 「あ~、うん!」




 「ほら、同じ真面目でもえらい違いだぞ。アイツは俺の目的をよーく分かってる!」


 
 岡木君は私を指さして、その真面目男子の肩をたたいた。



 うん、わかったよぉという返事を聞いて、男子は「よっしゃぁ、全会一致!」と叫んで走り出て行った。





 岡木君が私を指して、名前を呼んだ。





 なんだか、少しだけ熱くなった。




 
< 5 / 6 >

この作品をシェア

pagetop