冷たい彼

「あの日…ショッピングモールに杏子を呼んだのは、あのピアスを返すためだった。杏子のことを吹っ切るつもりだった。今日は…家を出家したいって相談を受けただけだった、何も…沙彩を裏切るようなことはしてねぇ」

「そう…。でもあなた達、あのままじゃいつかダメになってたわよ。だから…あなたは沙彩ちゃんを悲しませたぶん…幸せにしてあげなきゃいけないの」

「もう…俺は沙彩に関わらない方がいい」

本気でそう言いきったつもりだったが…そんなこと心では微塵も思ってなかった。

「いいえ、あなたどうせ諦めないでしょ?」

諦められるのならとっくに手放してる。

「まぁ…」

「あなたが…沙彩ちゃんを不安にさせない男になったときは、私も協力してあげるわ」

「いや…そんときは自分で迎えに行きますから」

「ふふっ…。あなた、昔の仁にそっくりね」

そう言って鈴華さんと深雨さんは帰っていった。

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