冷たい彼

遠くで金と黒の大きなバイクに乗り……
綺麗な薄茶の髪を涼しげに揺らす浅川さんの姿が見えた。

「沙彩」
そう、浅川さんの唇が動いた。

射抜くような切れ長の瞳は深い黒で…
その瞳に見つめられるとどんな女の子でも墜ちてしまう。

綺麗な薄茶の髪はサラサラで…無駄な肉もなくすらりと伸びた身長、程良い筋肉。

低く落ち着いた囁くような声。

彼のすべてがこの世の人々を魅了させるもので
…私はもうすでに離れられないのかも知れない。

「皇雅さん…」

彼の前でしか呼ばなかった名前…
でも今は自然と口から零れる…。

彼を取り巻く空気さえも輝いているかのよう。


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