鬼と天使と少年と、
「倭草、お前は俺をなんも分かっちゃいないよ。第一俺は………」



そこまで言いかけ、気づいた。




俺は今、何を言おうとした?


嫌われる内容を、怖れられる内容を、口にしようとした…?



「………っ!」



改めて思い返すとドッと汗が噴き出してくる。


自分が自分じゃないみたいダ。



自分がナンダカ恐クなっテキタ。



「……? 佐雄、お前顔色悪いぞ?」


「大丈夫ですの?」



ドクンどくん…



ヤメロ。見ルナ。



「佐雄、気分悪いんだったら保健室にでも……」



心配そうに俺の顔を覗きこむ倭草。触れようと手が伸ばされて……




オ願イダカラ、触レナイデ。



「後は俺らで雨乱を探すから…、それとさっきの話はまた今度に、」



ソウヤッレ俺ヲ、見捨テルノ?


微かだが過呼吸になりつつある俺。そんな俺のオカシナ様子にいち早く気づいた姫サマは呪文を唱えた。



「彼の者の気を祓わんことを命ず、

【羽ばたけ 光の幻風】!」



その瞬間、俺は雨乱に負けず劣らずの、綺麗な天使を見た……ような気がした。

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