鬼と天使と少年と、

ガクブルと震える体を両腕で支え、壁に背を預けてしゃがみ込む。


一体、なにがどうなってんだよ…っ


怖さのあまり、目にはうっすらと涙が溜まってきた。



「くそっ……なんで、雨乱もいないし、倭草まで偽者が出るし……。なんで、なんで、なんでっ!」



気づいた時には手遅れなんだ?


そう、そうだよ。なにも倭草だけじゃない。雨乱だってオカシイんだ。


運動オンチで鈍い雨乱が、誰にも気づかれることなく、すぐ近くにいた俺(と十六夜さん)を撒けることができるか?


無理だ。


いつの間にか一緒にいたアイツらだけど、それでも少なからず長所短所は知っている。



「ああもう、どうすればいいんだよ…」



こんな時こそ、無駄な魔力を使うべきなんだ。黒魔術?白魔術?それがなんだ。

修得できても、使うべき時に使える魔法を覚えなくちゃあ意味がない。

今の俺は、無能なただの人間だ。


ああもう、いっそ俺も消えてしまおうか…………




[ギぇエエえェええぇエえァガあッ!!!]

「?!」



突如として聞こえた鳴き声。

嘘、だろ……。
この鳴き声ってまさか。



[コろ、スううウうウウウウッ!!]

「ひっ……」



(偽)倭草が倒したはずの、あの白鳥。


それが今、廊下の影からぬっと出てきて俺の顔を潰すようにクチバシを向けてきた。



「…ははっ、笑えないって、これ」



俺、死ぬの?

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