鬼と天使と少年と、

ぎゅっと俺が両の拳を握ったのを見て、倭草は静かに口を開いた。



「【ファミリー】のこと、覚えてっか? ほら、高等部に飛び級生として入った初日。センセーに言われたろ」



『ファミリーには気をつけて』


そういえばと、顔を上げて「むぅ、」と腕を組んだ。


うん、まあ、後ろにその【ファミリー】がいらっしゃるんですがね。

ね、十六夜さん。




「そのファミリーと、接触したんだよ」




………え?


思わず後ろにいた十六夜さんの方へと顔を向けた。

だけど十六夜さんは肩をすくめ、『なんのことだか』と本当に知らない様子。

でも、倭草が嘘をついているとは思えない。


ということは、別の誰か?



「そんで頼まれたんだよ。佐雄をここ……旧校舎の地下室に連れてくるように、ってさ」


「ちょ、ちょっと待ってよ!俺を?一体誰が!」


「だからファミリーの、」


「その【闇喰いファミリー】の誰かって聞いてんの!」



正座しながらも威勢よく尋ねる俺に、倭草は「はあ?」と言って首をかしげた。



「【闇喰いファミリー】? ンだそれ」


「あ。しまっ……」



そういえば倭草はファミリーの存在を詳しく知らないんだった。

そう思い慌てて自らの口を塞ごうとした。けれど、



「俺に頼んできたのは、【舞創(ぶそう)ファミリー】だぜ?」


「え、」

「「はあっ?!」」



新たなファミリー登場に俺が声を漏らすと、後ろから二人の声がハモった。


言わずもがな、爺ちゃんと十六夜さん。


でも、なんでそんなに驚いたんだろうか?

< 160 / 220 >

この作品をシェア

pagetop