鬼と天使と少年と、
ぎゅっと俺が両の拳を握ったのを見て、倭草は静かに口を開いた。
「【ファミリー】のこと、覚えてっか? ほら、高等部に飛び級生として入った初日。センセーに言われたろ」
『ファミリーには気をつけて』
そういえばと、顔を上げて「むぅ、」と腕を組んだ。
うん、まあ、後ろにその【ファミリー】がいらっしゃるんですがね。
ね、十六夜さん。
「そのファミリーと、接触したんだよ」
………え?
思わず後ろにいた十六夜さんの方へと顔を向けた。
だけど十六夜さんは肩をすくめ、『なんのことだか』と本当に知らない様子。
でも、倭草が嘘をついているとは思えない。
ということは、別の誰か?
「そんで頼まれたんだよ。佐雄をここ……旧校舎の地下室に連れてくるように、ってさ」
「ちょ、ちょっと待ってよ!俺を?一体誰が!」
「だからファミリーの、」
「その【闇喰いファミリー】の誰かって聞いてんの!」
正座しながらも威勢よく尋ねる俺に、倭草は「はあ?」と言って首をかしげた。
「【闇喰いファミリー】? ンだそれ」
「あ。しまっ……」
そういえば倭草はファミリーの存在を詳しく知らないんだった。
そう思い慌てて自らの口を塞ごうとした。けれど、
「俺に頼んできたのは、【舞創(ぶそう)ファミリー】だぜ?」
「え、」
「「はあっ?!」」
新たなファミリー登場に俺が声を漏らすと、後ろから二人の声がハモった。
言わずもがな、爺ちゃんと十六夜さん。
でも、なんでそんなに驚いたんだろうか?