鬼と天使と少年と、
俺一人だけその【舞創(ぶそう)ファミリー】の存在を分かってないみたい。
ポカンと阿呆顔をさらしている俺に、頭をガリガリ掻きながら爺ちゃんが溜め息をついて俺を見据える。
「この前言ったはずだぇ?
『闇喰いファミリー、色々ファミリー、舞創ファミリー、影月(かげつ)ファミリー…
今目立っておるのはこの三つだ』
そう言った気がするがのぅ」
「そ、そういえば…」
言ってましたねー、てへっ。
目を泳がせて爺ちゃんから逃れていると、その隣にいた十六夜さんが怪訝な顔をして俺に言った。
「その舞創ファミリーには姫と剣牙がいるんだけどな……。アイツら何やらかそうってんだ」
水素爆弾並の衝撃。
あ、あの姫サマっ!まあーだ俺を恨んでらっしゃるのですか!
俺と十六夜さんは無関係だって何度も言ったのに!
そんで俺をここに呼び出してボコろうって魂胆か。ふっ、俺ってばちょう不幸者だなオイ。
ようは、巻き込まれてるだけじゃんか。
溜め息をついて、ぐでぇっと態勢を崩す俺。だけど爺ちゃんと十六夜さんの顔は曇ったままだ。
「?」疑問符を浮かべている俺に、さらに爆弾が投下される。
「なに言ってんだ? 姫さんにはなーんも頼まれてねえよ。だから雨乱の話した時も、姫さん懸命に雨乱探し手伝ってくれたんじゃねえか」
「え? じゃあ誰が……」
誰が、こんなことを?
3人の視線が倭草へと集まる。その視線に倭草が緊張しながらも、静かに口を開いた。
「俺に頼んだのは………」