鬼と天使と少年と、



うおう、なんか今、背筋がゾワッてした。

どうもー、駄目人間こと俺【佐雄】(さお)です。

好きなことは寝ること食べることのぐうたらっ子………


て、ふざけてる場合じゃないんだよね。



「え……倭草…いま、なんて」



震える声でわけもなく倭草を指差す。その指まで震えていて、なんだか滑稽だと自分でも思った。



「だから、姫さんと一緒にいたあの男だよ。名前、【剣牙】(けんが)だろ?」


「っ……そんな、」



まさか。

未だ信じられない俺だったが、いつの間にか隣に来ていた十六夜さんと爺ちゃんは「やっぱりな」といった風でさほど驚いていなかった。


二人は知ってたの?



「い、や……まっさかあ! 剣牙がそんなことする奴じゃないって。ほら、苦労人だけど俺の心配もしてくれたし、そりゃ確かに俺に毒吐いてきたかもだけどさ。でもやっぱり……」


「佐雄」


「っ……。うそだ、嘘だよ。嘘に決まってる……っ」



剣牙が俺を旧校舎に連れてこいって。
そんで白鳥に襲わせて。


信じたく、ない。


うつ向く俺の頭ンなかで、ふと出雲の声が木霊した。



『…………佐雄、多分だが別のファミリーが動いている。気をつけろよ』



ああ、出雲はわかってたのか。こうなることを…………………






………え?


わ か っ て い た ?

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