鬼と天使と少年と、
そんな倭草にくくっと馬鹿にした笑いを溢す十六夜は、倭草の沸き上がる怒りに気づいているのだろうか。
「いいこと、ね。まあ聞こえようによっては、あるいは捉えようによってはそうなるかもな。だけどそうじゃない。
闇っていうのはな、負の感情なんだ。よく言うだろ、『闇あっての光、光が輝きを増せば増すほど闇もまた強く疼く』って。
つまり、だ。その闇を喰われればそいつはもはやアウト。精神がぶっ飛んで最悪死ぬな。いや、生物の三大要素の『精神』が抜けちゃあ、最悪じゃなくても死んだことに変わりねえか」
「し、死ぬって……」
死んだことに変わりない
「それじゃあ、」
闇あっての光
「“あの出来事”もっ…」
「いいや違うね」
闇喰いファミリーはそんな安い集団じゃねえぜ?
吐き捨てるように言い倭草を睨む十六夜。その紫眼には僅かな怒りが宿っている。
「鬼子、あんたが何を思ってるのかは知らないがこれだけは言える。“あの出来事”は俺たちファミリーのせいじゃない。
“あの出来事”のキッカケは、全部、ぜんぶっ………」
怒りで声が震える十六夜。
さて、二人の間に共通する“あの出来事”とは一体なんなのか。
第三者には分かるまい。
いや、分かるとすれば、
「いっざよいサマぁああああっ!」
「え、」
「ひ、姫さんっ?!」
同じ灯を宿した同胞か。
はたまたファミリーの者たちか。
突如現れた姫サマにより、黒々とした雰囲気は免れたという。
姫さん、すげぇ。