鬼と天使と少年と、
教室の出入り口へと目を向けると、そこには色素の薄い金髪に桃色の眼をした長身お兄さんが立っていた。
腕を組み扉に寄りかかっている姿はなんとも色っぽい。こ、これが大人の色気ムンムンってやつか。
あ、そういや誰?
「久しぶりですね。あ、そちらのお孫さんが例の…。いやはや、強欲(あなた)とは似ても似つかないですねえ、まったく」
「なーんの皮肉だぇ、【白夜】(びゃくや)。わしに似ておらんといえど、佐雄は確かにわしの孫だぞぃ」
「彼が牡丹(ぼたん)一族の子だということは認めます。だけれど、強欲の孫だとは認めません。その顔を見れば尚更、ね」
………。うん?
一体全体なんの話をしてるんでっしゃろか。ちょ、誰かポンコツみそノー(脳みそ)に分かるよう説明してー。
牡丹一族?
俺の顔?
………。似てないってアレか。やっぱ俺が爺ちゃんと全く似ていないってことはイコール俺がイケメソじゃないって言いたいんですね分かります。
疑問符を浮かべる俺の横で、尚も爺ちゃんと色気ムン男の間に火花が散る。
ううん、十六夜さんといい剣牙といい色気ムン男といい。
爺ちゃんが何したっていうんだ?
頭を抱えウンウン唸っていると、そんな俺をチラッと見た色気ムン男が「場所を変えましょうか」と言った。
右手の指をパチンッと鳴らす。
その途端、俺の体がグラッと揺れた。
え、何コレなにこれ。
「うっ、きもちわる……」
「佐雄、さお!くそっ、白夜。一体なにをっ…」
「なにって、あの方のためですよ」
「あの方…? っ、まさかあやつっ」
……?
爺ちゃん、なんの話してんの。
俺にわかるよう説明してよ。
「それじゃ、お孫さんはまた後で。……嗚呼それと、僕と君は昔一度会ったことがあるんですよ。
あのときは嬉しかった。ダリア、佐雄くん」
「っ、え……」
俺はなにも知ら(覚えて)ない。