鬼と天使と少年と、
でも、俺の目の前にいるこの雨乱は、俺の探してる雨乱じゃないんだ。
『ゲームはこうだ。今から貴様を我の力である世界へ送る。そこで貴様が天使を見つけられたなら貴様の勝ち。
見つけられなかったら我の勝ちだ』
そう、確か言ってたよな、あの銀髪イミフ男。
て、ことはだ。
目の前にいるこの雨乱は偽者で、この世界で、本物の雨乱を見つけなくちゃ俺は帰れないってこと?
いや待てよ。確か銀髪イミフ男は『命もかかっている』って言ってたよね。
『時間制限はない』とも言ってた。
この世界で本物の雨乱を見つけられなかったら俺も雨乱も死んじゃう。
時間制限がないといえど、こんなワケのわからない世界に閉じ込められるってことは、……っ。
いやいやいやっ、そんなっ!
たかがゲームだろこれ?!
「あーっ、もう!なんなんだよもうーっ!俺は頭使うの苦手なんだよ雨乱みたく頭良いワケじゃないんだよコンチクショーっ!」
ぐわあっと天を仰いで思いっきり叫ぶ俺に、すぐ近くにいた雨乱がビクゥッと体を震わせた。
『何だコイツ』というかのように、いぶかしげな目で見てくるちっちゃな雨乱。
「…あの、頭、大丈夫ですか…?」
なんて言われる始末。
「ダイジョーブじゃないっ!だって俺、雨乱みたく要領良くこなせたりとか、頭良いワケでもないしっ、頭パンクしそうだしっ!」
「? 私みたく…?」
「そうだよっ!俺と雨乱は、ホントはちょー仲良しなのーっ!いっつも雨乱に頼っちゃうんだけど、雨乱はいっつもニコニコ笑顔で『しょうがないですねぇ』とかさ、ほんっとイイ嫁になるってあいつ!…あ、これ雨乱に内緒な。って、お前も雨乱か!」
「はあ、」
たはは、苦笑して笑う俺に、ちっちゃい雨乱はワケが分からないと相槌を打つばかり。
そうだよな。こっちの雨乱は俺を知らないんだもんな。
……。
なんか、それ、寂しいカモ。
んにゃ、すっげ寂しい。