鬼と天使と少年と、

落ちた衝撃でいくつか舞い上がった羽毛を見上げ、ひとまず助かったと溜め息をついた。

それにしても、ここはどこなんだろう。

体を起こし、辺りを見渡せば、どうやらお花畑のよう。おおう、日光ぽかぽか。まさにお昼寝に最適の場所じゃんか。

ぼへー…、とあてもなく視線をさ迷わす。目に映るのは花・花・花、花一色。おい待てほんとにここどこだ。


と、俺のすぐ目の前で三匹の蝶が通り過ぎた。モンキチョウだっけ?戯れるように三匹が交差しながら飛んでいく。

その三匹を目だけで追いかけてみた。……仲、良いな。俺ら阿呆トリオもあんな風だったのに。

今日一日がすごく長く感じる。
まだ、本物の雨乱に会えていない。


ふと、三匹の蝶の飛んでいった先に人影が見えた。二人いる。どちらもまだ幼いようだ。


よし、あの子たちにここがどこなのかを聞こう。そう決意して腰を上げたはいいものの。


「うっげえ、まーた花冠つくってんのかよ。いいかげん、あきねぇ?」

「ぜーんぜん。わたし、お花さん好きですもん」

「へーへー、花なんてマズイだけじゃんか」

「…お花さんは食べるものじゃないですよ?すくなくとも、オニであるあなたは食べないでしょ」

「でもお前ンちの奴らはちゅーちゅー吸ってんじゃん。やっぱテンシって食いもんもメルヘンだな」

「そうですか? あ、できましたよ、花冠。はい、あなたにあげます」

「またあ?」


……。あ、れ…?

ええっと、あの、ちっさい子らに見覚えがあるんですがおいおいおい。

まさかね、まさかとは思うよ?


「もうこれでなんかい花冠もらったと思ってんだよ、“うらん!”」

「いいじゃないですかー、あなたに似合いますよ、“わぐさ”」

「嬉しくねー…」


………。
うわあ、どうしよう。

俺とうとう耳がおかしくなっちゃったのかな。今、二人の名前が聞こえたようなー……、


「雨乱の羽はきれーだな。さすが天使」

「倭草のツノもなかなか立派ですよ。鬼はカッコいいですねえ」


うわ多分あの二人本物だ。モノホンだよ、モノホン。

だって天使と鬼って…!

でもこの二人、遠くから見てもちっちゃいことがわかる。

うーむ、これは別世界ってゆーより、過去か?過去なのか?

……じゃあ、誰の過去?
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