鬼と天使と少年と、
雨乱を離せとぎゃんぎゃん騒ぐ倭草くんのなんと微笑ましいこと。
あんたは姫を守る騎士ですかってんだ。
「雨乱をはーなーせぇえーっ」
「あーはいはいー、わぁーったから、わぁーったから服の袖ひっぱんないでねー、倭草くーん」
「わ、わたしっ、このヘンタイさんにっ、お、おかされちゃうんですかっ…?」
「いやちげーよ?」
ていうか『おかす』なんて言葉よく知ってんな。ちびっこ年齢のくせに『おかす』知ってるって、どーなの?
一応「めっ」と注意しておきつつ(子供扱いすんなと怒られた。子供のくせに。)、蔓を緩めて雨乱の拘束をほどいてやった。
蔓から逃れた雨乱は一目散に俺から逃げて倭草の影へ。
心外だなあ。
ていうかお兄さん悲しす。
内心ほろりと哀愁を漂わせていれば、なんだかジロジロと見られてる感じがしたのでちびっこ二人に目を向けた。
案の定、ちびっこ達が俺を見てたみたい。もちのろんで目を逸らされましたが。
このチビども俺を悲しませる天才だよコンチキショウ。
冗談はさておき。
「んーと…、そんなに見つめられるとさすがの俺も照れるんだけど…」
「みっ、見てねーしっ!」
「『じいしきかじょー』なんじゃないんですかっ!」
「おおう、辛辣ぅっ」
自意識過剰て、雨乱くん。
心優しき君に言われるとヒッッッジョーに突き刺さるんだがベイベー。
俺の心臓(ハート)が危機に瀕している。もはや蜂の巣状態といっても過言じゃないんじゃないかな、うん。
「あー…、じゃあ、俺はこれで…」
“この雨乱”も本物じゃあ無さそうだし、ね。
そう思い踵を返して足を一歩前に浮かせる。
さて、どうやって次の雨乱に会えんのかは分かんないけど、ずぅっと歩いてりゃいつか本物の雨乱に会えるでしょう。
まったく、あの銀髪イミフ男もほーんとやっかいだよねえ。
なんでわざわざ雨乱を探させる必要があるんだか……、ん?
「…っ、どこ、行くつもりなんだよテメェっ…」
「えーと…」
なんと、ちびっこ倭草くんが俺の服の裾をぎゅうっと掴んでいた。
さすが鬼の子。掴む力つよいな。
っていうか睨んでる倭草くんの上目遣いが可愛いなあなんて待て俺今なんて思った?ショタに走っちゃあいかんだろうよ。
て、いうか……。
これは一体どういうことでっしゃろか?
俺、行くとこあるんだけど。
(※ただしアテはない。)