鬼と天使と少年と、

わけもわからずどうしようかと迷いつつ、睨んでくるちびっこ倭草くんのせいで居所が悪いのなんのって。

頬を掻いて誤魔化してみるも、それが癪にさわったのか、ちびっこ倭草くんは歯をギリッと鳴らしてさらに服の裾を引っ張った。


「ふっざけんなッ!いいから教えろ!テメェは何者なんだッ!」

「…? ええっと意味がよく分かんな…」

「…ッ、だから!なんで俺の名前を知ってんだよ!さっき俺の名前呼んだろ?! でも俺はっ、俺は“テメェのことなんざ微塵も知らねえっ!“
なんっ…なんだよっ…、
親父か!親父の差し金なのか?!わけわかんねーよ!あああっもうっ、
いいからさっさと答えやがれッ!!」

「!」


ぶわっと広がる赤色の光。それは倭草の体から滲み出ているものだった。

確かこれって…。


「わわっ、倭草っ、落ち着いてくださいっ!」


ギラつく倭草をなんとか止めようと、倭草の片腕にしがみつく雨乱。

しかし今の倭草はそれすらも鬱陶しいと思ったか、


「るっせえッ!」

「っ、イタッ…」


なんと、雨乱の手を振り払い、あろうことか肩を強く押してしまったのだ。

当然、倭草は鬼で、力も強くて。
だから雨乱は簡単に尻餅をついた。

おまけに倭草は気持ちが昂ってるから?魔力が?駄々漏れだし?
そのせいで?雨乱もちょっとばかしダメージ受けてる?みたいだし?

ちびっこだからしょうがないとか?まあ分からんくも?ないけど?けど、さあ…。


唸り、こちらを睨む倭草は我を忘れかけている。
おお、怖い怖い。そーんな目で睨みなさんなって。


それとな、倭草。


「ちょっと我慢しなよー…」

「は?いいからさっさと答えっ……」

ゴンッ

「イッデー!」


花畑にあるまじき痛々しい音。
それは俺の拳と倭草の頭がぶつかり合ったせいで…、っていうか。

俺が倭草に拳骨くらわせたから。


「ッツ、てめっ、なにすんだよっ!」

「なに、って。倭草、お前こそなにしてんだよ。いま、雨乱を押しただろ?そんで雨乱は尻餅ついたっていうのに、お前は見向きも気にしもしないで……。
なあ、雨乱はお前の、“友達”じゃあないのか?」


友達に、そんな仕打ちしていいもんだと、お前はそう思ってんのか?

幼馴染みだからって、そういうことしても許されるって、お前、まさか思ってたの?


しゃがみ込み、倭草と目線を合わせる。
俺の拳骨は痛かったらしく、ちびっこ倭草は少しばかり涙目になっていた。

ふんっ、自業自得なのです!
友達を大切にしない君が悪いのでーす!
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