鬼と天使と少年と、
それでも俺の言いたいことは伝わったらしく、斜め後ろにいる雨乱に視線をうつした倭草は、ちょっと間をあけてから「ごめん」と言った。
もちろん、雨乱は優しいからねえ。
「別にいいですよ、私もとくにケガなんてしてませんもの。ね?」
そう返してにこやかに笑った。
ほっほっほ。微笑ましいねえ。
ちょう和やか、雨乱くんバンザイ。
さーて、それじゃ倭草も反省してくれたみたいだし、俺はもう行くとす…。
ガシッ
「で、逃がすとでも思ったか。丸くおさまりました良かったねオーラ出してんじゃねえぞ あーん?」
「……。」
お 顔 が コ ワ イ 。
うわあ鬼だよ本物の鬼だあ。
ものっそい形相で俺のこと睨んでるーぅ。
もう、アレだね。
目だけで俺を殺しそうな勢いだね☆
「HAHAHA、わーくんお顔が怖いですよーおほほほほほ~」
「笑って誤魔化せるとでも思ってんのかテメェ…?つか【わーくん】て呼ぶんじゃねーよ」
「ウフフ、でもすっごく似合うアダ名だよお、わ・あ・くん(はあと)、……って、アイダダダダッ!首っ、首しまってっからあががががッ!」
ぎゅううっ、て!ぎゅううって首しまってるよわーくん!
ちょっ、ギブギブ!俺まじ死ぬって!
ちびっこ雨乱もっ、見てないで助けてくれよ!
「仲良いですねえ、ふふっ」
「(どこが?! ねえどこがッ?!)」
「阿呆か、雨乱。仲良さげに見えんのはこのヘンタイがへらへらしてっからだよ。マゾかこいつは」
「(いやいやいやっ、よく見て!この何の取り柄もない平凡顔を見てよほら!今にも死にそーなんですけど!)」
「わたし、このヘンタイさん悪い人じゃないと思います。というか、弱いですし」
「それは同感」
「(ちょっ、ひどっ!ていうかマジで、死ぬ、か、ら……)」
ぎゅううっと絞められる圧迫感が緩められることなく、倭草と雨乱は言いたい放題な始末。
その後、俺の意識は呆気なく飛ぶのであった。ちくせう。