鬼と天使と少年と、
それから目一杯遊んだ。もう俺だってヘロヘロだよ~…。
ちびっこ雨乱に読み聞かせをしていると、遊び疲れたせいで眠っちゃったようで。
で、現在に至る…と。
「はぁぁ…、いつになったら帰れるんだろ、俺。この空間の雨乱も違うみたいだし…。なっかなか見つかんないもんなんだねえ。
……はやく、また3人で阿呆なことやらかしたいな」
阿呆みたいに笑って、そんで、……。
「……もう帰りたいよ…」
ツン、とくる鼻の痛み。
ああもう、ダメだダメだっ。泣いちゃダメだってば!
込み上げてくる涙を、歯を食い縛って懸命にこらえる。
我慢しなきゃ、我慢しなきゃ。
そう思うのに。思えば思うほど、じんわりと視界が滲む。
倭草に会いたい。
雨乱に会いたい。
爺ちゃんに会いたい。
みんなに、『おかえり』って笑顔で抱き締めてもらいたい。
『ただいま』って。早く言いたいっ…!
温もりが恋しくて、当たり前のようにずっと一緒にいた彼ら。一時(いっとき)でも離れ離れになるなんて思いもしなかった。
考えられもしなかった。
どうして、こんなことになったんだっけ…?
こんな変なゲームに巻き込まれたから?ちがう。もっと前。
雨乱が逃げて、探すハメになったから?ちがう。それは仕組まれたことで。
姫サマと剣牙のお騒がせコンビに出会ったから?ちがう。二人は関係ない。
十六夜さんたちファミリーに絡まれたから?ちがう。あれは俺が悪いんだ。
じゃあ…、
こんなとこ(高等部)に、編入なんてしちゃったから?
飛び級なんてしちゃって。
高等部に行くことに、倭草も雨乱もなにかと心配していた。
でも俺はそれを『大丈夫』と軽い気持ちで宥めて。
……ああ、そっか。
俺が、浅ましかったせいなのかな。
それとも、俺の魔力のせいか。
それなら、こんな力、いらないのに。
この力のせいで俺は、昔から誰かを傷つけていた。
今度は、自分自身に矛を向けるの?
いや、違う。
今までの分が、今まで他人を傷つけた分が全部、自分(俺)に返ってきただけだ。
なんて滑稽な。
「はは、はっ……、バッカでえい。こうなったのはぜーんぶ、俺のせいじゃんかよ…」
それなのに、相変わらずの駄目人間っぷりで。相変わらず人に迷惑かけて。
「…そりゃ、こうなるわな」
もしかして、と思う。
もしかして、雨乱がこうして逃げたのは、女装が嫌だったからなんかじゃなくて。
こんな俺が嫌になって、んで、逃げたんじゃないかなって。
「クソッタレ…」
そんな、もしもの話。