鬼と天使と少年と、
*
どうやらまた別空間に飛ばされたらしい俺は、無慈悲に冷たい床へとその体を叩きつけられた。
い、痛いってこれっ…!
ジーンとくる痛みにしばし悶えながら、今度はどこに飛ばされたのか五感を使って探りだす。
まず、視覚はダメ。
さっき目を潰されたからね。痛いし、もう片方の目はぼやけるし。
で、口もアテになんないでしょ。
(床を舐めろと…?)
触覚は冷たくて固いってことしかわかんない。十分な情報だけどね。
んでんで、嗅覚。
湿気のムワムワした臭いがやばいのなんのって。カビ臭いし。空気冷たいから鼻の奥ツンとするし。
最後に聴覚。
よーく耳を澄ませば、ぴちょん、ぽちゃん、と水の落ちる音がする。
そして、微かに呼吸する音が。
「雨、らん…?」
気づけば、口がそう勝手に動いていた。この空間に飛ばされたということは、偽であれ真であれ『雨乱』がいるということだ。
なら、この呼吸ももしかしたら…。
そう思っていると、「え、」という驚くような声が返ってきた。
それは聞きなれた、けれどあまりに弱々しい声色だったから。
「うら…、どこ…?」
「っあ…!」
声をかければ短いけれど返事(だと思われる言葉)が返ってくる。
そしてジャラジャラと重そうな音も耳に入ってきた。
これは鎖の音…?
だとしたら、この雨乱(仮)は拘束されてるってこと…?!
そんなっ…嘘だろ!
なんとか雨乱(仮)を助け出そうと身をよじる。けれど、なかなか体は思うように動いてはくれない。
もどかしく思う間にも、相手側からは尚も鎖の音が聞こえてくる。どうやら相手も何かしら焦ってはいるようだ。
そうこうしている内に、次の瞬間、体中に電撃が走ったような感覚を覚えさせられた。
「っ佐雄……!」
「……!」
それは、探し求めていたはずの、悲しく優しい天使の声だったから。
どうやらまた別空間に飛ばされたらしい俺は、無慈悲に冷たい床へとその体を叩きつけられた。
い、痛いってこれっ…!
ジーンとくる痛みにしばし悶えながら、今度はどこに飛ばされたのか五感を使って探りだす。
まず、視覚はダメ。
さっき目を潰されたからね。痛いし、もう片方の目はぼやけるし。
で、口もアテになんないでしょ。
(床を舐めろと…?)
触覚は冷たくて固いってことしかわかんない。十分な情報だけどね。
んでんで、嗅覚。
湿気のムワムワした臭いがやばいのなんのって。カビ臭いし。空気冷たいから鼻の奥ツンとするし。
最後に聴覚。
よーく耳を澄ませば、ぴちょん、ぽちゃん、と水の落ちる音がする。
そして、微かに呼吸する音が。
「雨、らん…?」
気づけば、口がそう勝手に動いていた。この空間に飛ばされたということは、偽であれ真であれ『雨乱』がいるということだ。
なら、この呼吸ももしかしたら…。
そう思っていると、「え、」という驚くような声が返ってきた。
それは聞きなれた、けれどあまりに弱々しい声色だったから。
「うら…、どこ…?」
「っあ…!」
声をかければ短いけれど返事(だと思われる言葉)が返ってくる。
そしてジャラジャラと重そうな音も耳に入ってきた。
これは鎖の音…?
だとしたら、この雨乱(仮)は拘束されてるってこと…?!
そんなっ…嘘だろ!
なんとか雨乱(仮)を助け出そうと身をよじる。けれど、なかなか体は思うように動いてはくれない。
もどかしく思う間にも、相手側からは尚も鎖の音が聞こえてくる。どうやら相手も何かしら焦ってはいるようだ。
そうこうしている内に、次の瞬間、体中に電撃が走ったような感覚を覚えさせられた。
「っ佐雄……!」
「……!」
それは、探し求めていたはずの、悲しく優しい天使の声だったから。