鬼と天使と少年と、
とにもかくにも、このまま爺ちゃんと一緒にいても会話にならないどころか苛められそうだ。


ここは一時退却……かな?


俺は溜め息をついて立ち上がると、制服についた土をはらって爺ちゃんの方を向いた。



「俺は今から教室に戻るけど……爺ちゃんはこの後どうすんのさ?」


「そうだのぅ……【ファミリー】のとこでも訪問してるかの」



そう言って爺ちゃんも立ち上がり、ポケットに手を突っ込んでどこかへ歩き去ってしまった。


去り際に、



「くれぐれも暴走するんじゃないぞぃ。昨日と同じことをしでかしたら……分かっておるよのぅ…?」


「ーっ!わかってるよ……。これからは、過剰反応しないよう気をつけるから……」


「うぬ、さすれば【ファミリー】も近づかんだろうしのぅ。……佐雄、死ぬでないぞぃ」


「………。」



孫に物騒なことを言わないでもらいたい。


だけど、



「………ありがと、爺ちゃん」

「ん」



それが、爺ちゃんの優しさ(愛情)だってわかってるから。


つい口元が緩んでしまうのは致し方ない。



直接的なようで遠回しな言い方をする爺ちゃんは、やっぱり俺の唯一の理解者だと思う。



「……おぉ、それとな。佐雄」


「ん?なに、爺ちゃん」


「お前のクラスの……茄希ちゃん。かわええのぅ。鳴かせてみたいわ」


「……………。【ς·βαδ】(炎龍舞)」



ゴウッと音をたてて龍の形をした炎が爺ちゃんを襲う。



「かーかかかっ!まだまだだのぅ。………ふむ、修行メニュー増やすかぇ」



なにやら嫌なことを聞いた気がするけどスルーの方向で。


……っていうか、



「茄希先輩に手ぇ出したらダメだからな!」



そう怒鳴り散らした俺の声が爺ちゃんが聞き入れてくれたかどうかなんて分かんない。


けど、「かっかっか!青春だのぅ」と言ったのは確かだ。


まったく!
爺ちゃんってばすぐ口説くんだからさ!


自重してほしい。切に。

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