アンバートリップ
気を取り直してショルダーバッグを外し、傍らに置いてから「あっ」と青ざめた。
「どうかされましたか?」
「あのごめんなさい。私、お金を殆ど持っていないのを忘れていて。また今度来ます」
残りの千円札は、タクシー代に消えてしまっている。
つまり、所持金は多く見積もっても二百円くらいだ。それじゃ、何も買えない。
丸くてやけに脚の長いカウンターの椅子から慌てて降りる。
その時、ふとマスターの長い指が私の手に重なった。
「大丈夫。お支払いは、既に別の方から頂いております」