アンバートリップ

「……」




 行き場を失くした言葉は喉に張り付き、やがて苦くなる。

 それは粘性の強いドロッとした液体に変わり、胸の中へ浸潤していった。





「分かっているわ」

 呟き、細長いタンブラーの水滴をぼぉっと眺める。

 雫は他の雫を巻き込んで、一筋の線となり、コルクのコースターに次々と染みを作っていった。






「珀は、死んだもの。もう、ずっと昔に」






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