アンバートリップ

 母と義父の間に不穏な空気が流れていると、随分前から感じてはいた。

 母は義父に対しても小言を言うようなっていたし、それを回避するためか、義父は書斎にこもりがちだった。

 けれど、二人があからさまに言い合ったのはそれが初めてだった。




(嫌な予感がするな)

 廊下に隠れ、そう思った。


 おぼろげな記憶の残像に、似たものを知っていたからだ。


 たぶん、私の本当のお父さんが家を出た辺りの頃、私が二歳の時だ。

 丁度こんな風に、母はキンキン声で毎日怒鳴っていた。


 それから程なくして、私は母子家庭になったのだ。


 と、言う事はつまり……




< 135 / 238 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop