アンバートリップ
母と義父の間に不穏な空気が流れていると、随分前から感じてはいた。
母は義父に対しても小言を言うようなっていたし、それを回避するためか、義父は書斎にこもりがちだった。
けれど、二人があからさまに言い合ったのはそれが初めてだった。
(嫌な予感がするな)
廊下に隠れ、そう思った。
おぼろげな記憶の残像に、似たものを知っていたからだ。
たぶん、私の本当のお父さんが家を出た辺りの頃、私が二歳の時だ。
丁度こんな風に、母はキンキン声で毎日怒鳴っていた。
それから程なくして、私は母子家庭になったのだ。
と、言う事はつまり……