アンバートリップ
母は剣山のように尖った言葉を、義父に次々と投げつけている。
「私の努力が足りないって言うの?」
義父が溜息を吐く。
「そうは言っていないだろう。ただ、日本では認可されていない新薬の治療が、向こうでは受けられるんだ」
「そんなの、ただの言い訳だわ。あなたは治療費を稼ぐために珀を私に押し付けておいて、お金が溜まった途端、私と結奈を捨てるのよ」
「だから、珀が良くなるまでと言っているだろう? それに、もし望むなら君と結奈も一緒に……」
「一緒に、亡くなった元奥様の御両親の家に住めって言うの? そんなこと出来るわけないじゃない! 冗談じゃないわ!」
「彼らはフランクな人たちだよ。君や結奈の話をしたら、快諾してくれた」
「私が嫌だと言っているのよ! それに何? 何の断りも無しに、珀の祖父母と内緒で連絡を取っていたわけ?」
「だから、今話しているじゃないか。君にばかり迷惑をかけるのも良くないと思って、先に話を付けておいたんだ」
「それも言い訳よ!! あなたも結局、結奈の父親と同じように、私たちを捨てるつもりなのよ」
「しっ、そんなに大声を出したら、結奈が起きてしまう」