アンバートリップ
バスは最後の土産屋に移動し、私はそこでお目当ての三猿の置物を購入した。
「六百円になります」
財布から千円札を取出したついでに残金を確かめると、千円札がまだ四枚も収まっていた。
クラスメートたちが、行く先々でちょこまかくだらないお土産を買っていたのに対し、私はそれが初めての買い物だったのだ。
「すみません、やっぱりあと三つ買います」
店員のおばさんが三猿を安っぽい紙袋に入れている間に、急いで同じ物を三つ、棚からレジへ運び、更に二千円を差し出す。
「全部同じでいいの? 他にもキーホルダーやぬいぐるみもあるわよ? 待っててあげるから選んで来たら?」
パーマをかけた優しそうなおばさん店員の申し出に、私は首を振った。
「同じがいいんです」