アンバートリップ

 お義父さんとお母さんが別れて、珀とお義父さんが他人になる前に、私たちが家族だった証を残しておきたい。

 だから、お揃いの物が欲しかった。




 買い物を済ませ、バスに乗り込む。

 このバスが走り出せば、恐ろしく長かった旅行もついに終わる。




「結奈ちゃんが三猿の置物買ってるの見て、あたし、それのキーホルダーを買ったのよ。ほら」

 髪をきっちり編み込んだクラスメートが、キーホルダーを振ってニコニコと笑う。

 もちろん、あの子だ。私たちは同じ班で、バスの席まで隣だった。




(買ったのが、置物じゃなくて良かった)

 内心ホッとしながら、私は寝たふりをした。

 そうでもしないと、永遠に喋る子だった。




 その寝たふりがいつしか本当になって、空が赤く染まった頃、バスは無事学校へ到着した。





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