アンバートリップ
drink

琥珀と金色


「結奈様、大丈夫ですか? 顔色がすぐれないようですが」


 名前を呼ばれて顔を上げる。

 重力に逆らえず、大粒の涙がカウンターに数滴落ちた。


 琥珀色の瞳が、心配そうに私を覗き込んでいる。


(珀?)

 一瞬、過去と現実が交錯する。

 優しく、どこまでも深い琥珀色の瞳。思わず手を伸ばす。




(違う)




 慌てて手を引っ込め、私は溜息を吐いた。


 よくよく見れば、彼の瞳には珀には無い涼しさみたいなものが宿っている。

 やっぱり、琥珀色と言うよりは金色なのだ。


(この人は、珀じゃない。そんなの分かりきっている事じゃない)


 絶望するのにも疲れ果て、私は力なく微笑んだ。






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