アンバートリップ
「ごめんなさい。この山を登り始めてから、なんだか、ずっと情緒不安定なの。何故か、昔の事ばかり思い出してしまうのよ」
ほうっと、息を吐き、ショルダーバッグをちらりと見やる。
その中には、あの日の三猿と同じ物が入っているはずだ。
私の心の箱がかちゃりと開くのは、この三猿のせいだろうか?
それとも、これをくれたおばさんの言っていた、山神様の力のせいなのだろうか?
ううん、きっと、これがマリッジブルーなのだ。
だって、神様なんてこの世に存在しないのだから。
「さぞ、お辛かったのでしょうね」
「え?」