アンバートリップ

「どうなのでしょう。ただ、神様と呼ばれるものには、ほぼ必ず、伝説や逸話が存在します。その多くは崇拝者の願いを反映しているものです。つまり、彼らがどのような願いを持っているかによって、伝説や逸話は幾通りにも変化するのです」

 なるほど。と、思った。



 昔、珀と海を望んだ神社公園の神様について、妄想したことがあったからだ。



 その神様は、元は人魚姫で、人間に恋して、陸に上がって恋愛の神様になったのだと、私は考えた。

 そして、いつの間にかそれを信じきっていた。




 たぶん、あの頃の私が、珀にある種の想いを寄せていたせいなのだろう。



 珀は、「神様ってイエス様でしょ? ここにいる日本の神様は違うの?」と不思議そうに首を傾げ、私は異文化と言うものを垣間見た気がした。





「きっとお土産屋さんのおばさんは、あなたのことを願いながら山神様を連想したのでしょうね」






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