アンバートリップ

 やまがみさんは、口角を上げて微笑んだ。


「? どういう意味ですか?」

 彼は含みがちに笑う。

 その悪戯っぽい顔は、やっぱりどことなく珀に似ていた。



 私は溜息をついて、話題を変えることにした。

「ええと、メニューはどこですか?」

 そう言えば、メニューが見当たらない。

 カウンターのテーブルや壁を探したが、どこにもそれらしいものはなかった。




「当店にメニューはございません。というのも、当店で扱う商品は、コーヒーや紅茶のように表記出来ないのです」


 やまがみさんが、また意味ありげに微笑む。




「? どういう事ですか?」


「説明するよりも、実際にお召し上がりいただく方が分かりやすいかもしれません」





 コトリ。






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