アンバートリップ

「ドリンク? そんなはず」

 珀を振り返る。珀は確かにそこにいた。



「?」

 何となく、さっきより身体が薄くなっている。どうして? と、やまがみさんを振り返る。



「そちらのドリンクは、珀様が結奈様のためにご予約されたものであり、原料に珀様の想いが含まれております。しかし、飲み物ですので、味わうことは出来ても、会話は出来ません。どうぞ余韻が消えぬうちに、一口ずつご堪能ください」


 私はしばらく、やまがみさんと珀を交互に振り返った。

 そうしているうちにも、珀の全身がぼんやり薄れていく。



(とにかく、これを飲むべきなのだわ)

 やっと判断し、また一口、そのドリンクを含んでみる。


 瞬間、珀の骨格がパッと鮮明になった。 



 珀が笑う。






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