アンバートリップ

 目を閉じる。

 私は、呟いた。


「五月のラッキーアイテムは、携帯電話と、テディベアと、海よ。読んでないのは六月からだわ」

 母が、はっきり、ゆっくり、丁寧に読み上げていく。


「五月生まれのあなたは、仕事運が好調。今まで頑張って来た成果が、目に見えて現れそう。上司や先輩に認められ、昇給やちょっとしたボーナスが期待できそうです。ラッキーアイテムは、携帯電話、テディベア、海ですって。六月生まれのあなたは……」



 母の朗読が、私の耳を伝って、脳のどこかを刺激していく。




「……」

 私はずっと長い間、こうして母の声を一日中聞き続けている気がする。






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