アンバートリップ

すれ違った心


「私ね、おばあちゃん家で暮らして両親とは離れていたけど、全然寂しくなかったわ。だって、おばさんが私の話を熱心に聞いてくれて、相談に乗ってくれたもの。私の母なんて、自分勝手で口うるさいばっかり。私の話なんて全然聞いてくれないのよ。だから、こんなに理解あるお母さんがいて、結奈ちゃんが羨ましいって思うわ」



 理解ある?


 苦笑する。

 
 母は、いつだって他人には優しい。

 自分が良く見られたいから。




「娘の私には、冷たかったけどね」

 その嫌味は、二人には聞こえない。




 母は力なく笑い、頭を振った。





< 203 / 238 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop