アンバートリップ
「あら、結奈」
「ママ。いい香りね」
私が日本語で笑うと、ママも「でしょう」と微笑んだ。
日本にいる時は、お母さん、お義父さんと呼んでいたけれど、ここに来てからは、日本語の会話の時でもママとパパに改めた。
なんとなく、その方が親近感も増す気がするからだ。
「今日のスコーンはママが作ったから、甘さ控えめよ」
「私はもっと甘い方がいいと言ったんだけどねぇ」
グランマが肩をすくませる。
彼女のそういう、いかにも西洋的なしぐさを見ても、何故か懐かしい気分になる。
「結奈からも、なんとか言ってちょうだい。私がちょっと目を離すと、すぐグランマは生地に砂糖をたっぷり入れようとするのよ。スコーンはジャムで食べるものなのに」
「だけどねぇ」
まるで、本物の親子のように英語で言い合いを始めた二人に呆れながら、私はソファに座った。