アンバートリップ

 繋いだ白く柔らかい手の感触を思い出し、胸の奥がくすぐったくなる。同時に、みぞおちに鈍い痛みのようなものも植えつける。



大丈夫。別に、昔の事だ。




 私はもうじき、結婚するのだから。


 もうずっと遠い過去、私は彼との思い出を、心の箱に閉じ込めると決めたのだ。



 その時が来るまで。





 心が疼く。


 長い間、私は『その時』を待っている気がした。


 

 一体、その時はいつ来るのだろう?


 その時とは、いつの事なのだろう?


 もしかして、その時なんて永遠に訪れないのではないだろうか?



 不安が襲い、首を振る。可笑しくなって、小さく笑う。




 やっぱりこれが、マリッジブルーという奴なのだ。




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