アンバートリップ
不幸などんぐり
小学四年生の夏休みも通り過ぎ、生き残った長寿のツクツクホウシがぱらぱら鳴く残暑。
変わらずの暑さの中にも、時たま、涼しい風がそよぎ始める。
その日、私と珀は放課後のどんぐり拾いに夢中だった。
二人で自転車探検に出かけて見つけた雑木林で、不幸にも熟しきれずに落ちてしまった緑色のどんぐりをどちらが多く見つけるか、私が珀に勝負を挑んだのだ。
地面を舐める様に屈んで歩いていた私は、雑木林が闇に呑まれていることに全く気付かなかった。
夕焼けは木々に遮られ、暗く肌寒いと知った時、ふと、ここにいる珀と私が、世の中で最も不幸な子供のような気がした。
「ねえ珀。私たちって不幸だと思わない?」