アンバートリップ
喉が渇いたな。
唐突に、そんな気がした。
自動販売機でも探そうと、辺りをキョロキョロしながら歩く。等間隔に西洋風の街灯が並ぶ狭い遊歩道に、それらしきものは見当たらない。
「諦めた方がいいかな」
呟いた時、タイミング良く冷蔵庫のある土産屋が現れた。透明なペットボトルが数本、中で冷やされている。
私は近づき、ふと立ち止まる。
何故か、冷蔵庫の隣にあった埃っぽいガラスケースが目についた。
「猿?」
色も大きさも様々な猿の置物がディスプレイされている。目を惹いたのは、その中の一つだった。
「見ザル、聞かザル、言わザル……か」
安っぽい陶器製の朱塗りの三猿。手の平ほどのそれは、私が小学校の林間学校でお土産に購入したものとまるで同じだ。
「何であんたがこんな所にいるのよ」
日光東照宮でもないのに。
忌々しい記憶が頭を霞める。
子供の私は、それと全く同じものを家族分、つまり四つも購入したのだ。
『あなた、どういうつもりなの?』
昔ぶたれた頬が、痛んだ気がした。
「山神様なんですよ」