アンバートリップ

 思い出は、芋づる式にあの日の母まで呼び起こし、口腔内に苦みが走った。


 その日、どんぐり拾いに夢中で門限に間に合わなかった私たちは、母にこっぴどく叱られた。


 母は私と珀を並んで立たせ、「二人とも、門限は守りなさい」と、私に向かって何度も何度も怒鳴った。

 母の怒りを頭上に受けながら、世の中で最も不幸な子供は「珀と私」ではなく、「私」に違いないと思った。





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