アンバートリップ

 夫婦岩から手を放し、ペットボトルを取り出して、苦々しさを胃の奥へと流し込む。

 ふうと息を吐いた私は、改めてその岩に触れた。




 冷たくごつごつした、ただの岩だ。




 このただの一枚岩を『夫婦岩』と命名した人は、珀と似た感性の持ち主かもしれないな。


 微笑み、冷やりと無機質な岩から手を放すと、私は、また歩き始めた。





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