アンバートリップ

「いい加減にしなさい! 全く、情けない。お母さん、時間がないの分かるでしょう? 結婚式にはお母さんの知り合いが沢山来るのよ! 招待状に『妥協せず待ったかいがあり、生涯無二の伴侶を見つけられました』って書いてあったのよ。私への当てつけみたいに。もし行かなかったら、やましい所があるみたいじゃない。だからきっちり身支度を整えて、幸せそうにしていないと、私たち家族全員が恥ずかしい思いをするのよ!!」



 母の怒鳴り声に、珀が二階から降りてくる気配がした。

 途端にスッと、気色ばんだ表情が収まって行く。私は母のそういう態度も許せなかった。



「なら、出て行く!」


 大声を出すと、「シッ」と指を立て、母はげんなり言った。


「なら、好きになさい」

 諦めたような溜息が、私の喉元にドロッとした液体を流し込み、窒息させようと企む。




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