アンバートリップ

 ゴオーと強めの水の音が、大人になった私の鼓膜に戻って来る。


 気が付けば涙がすっと流れていた。

 ハッと片手でそれを拭う。



 慌てて川べりから離れようとして、ザッと前のめりに転んだ。

 ブーツの踵が生えていた草の根に引っかかったのだ。


 身体を起こす。



 手の平が擦り剥け、所々血が滲んでいる。







 赤い。






 珀の流した血と同じ色だ。




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