アンバートリップ

 無音の林に、ウインドブレーカーが擦れる音と、珀と私の笑い声が響く。


 ほっぺたを刺す様な冷たさの中で、私の身体は上気し、セーターの中がじっとり汗ばんでいた。





 しばらくして、雪玉を丸める珀の鼻からツウと真っ赤な血が流れた。

 真っ白な雪の上にぽたりと斑点を作る。


 スポイトで水彩絵の具を垂らしたみたいに、恐ろしく美しい鮮血の球が、珀の足元に一滴、二滴と増えていく。




< 81 / 238 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop