アンバートリップ

 珀は大丈夫と言ったけれど、やはりその鮮血を見ると心配になり、ある日私は、仕事から帰った義父にそのことを伝えた。


「男の子はわりと鼻血を出すんだよ。今は冬で空気も乾燥しているから、たぶん、毛細血管が切れやすくなるんだろうな。心配はいらないよ」


 義父の笑みを見て、何か変だなと思いながらも、大人が言うのなら本当に大丈夫なのだと、私は安堵したのだ。



 翌日の早朝、母が「念のため、珀を病院に連れて行くから、留守番お願い」と、せわしなく珀を連れてタクシーに乗り込み、病院へ向かった。





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